2018.05.30
インタビュー: 藍を育て、染める。藍の糸 レポート vol.01
藍の糸が染まるまで
オンラインショップリニューアル企画の限定商品、藍染めの糸。京都の大原で長年天然染の工房営んでいらっしゃるカズコさんにご指導いただいて、スタッフも一緒に染めてきました。今回は、その染めのお話です。
◆ まずは染める前の下準備
今回藍で染めることにした糸は、膨らみのあるカード綿。アヴリルでは、このシンプルな糸を染めてパステルやスペックなどを作っています。
このカード綿、染める前にどんな下準備が必要なのか、カズコさんがさっと調べてくださいました。
今回は、精練(せいれん)をしてから染める、に決まりです。
「水に浸けたら浮くか、沈むか。それが精練するかしないかのポイントやね。油がついてたら沈まへんのよ。」
精練とは、糸についている余分な油や汚れを茹でて取り除く、大切な作業です。汚れを落とすことで、色が入りやすく、発色も良くなる、いわば下地作りと言えます。
カズコさんの工房では、灰汁で糸を茹でる、灰汁練(あくねり)をします。
茹でるのに使われているのは、なんとかまど。
かまどを見るのが初めてのアヴリルスタッフは、工房スタッフのノリさんに薪の入れ方から教えてもらいます。
火加減を見つつ、汚れの落ち具合を見つつ、染の準備をしつつ、、、、いろんな作業が同時進行です。
茹でていると、透明だった灰汁が黄色く濁り、なんだか匂いもしてきました。
アヴリルスタッフ「ちょっと臭い、、、灰汁のにおいですか?」
ノリさん「糸についてる埃とかの匂いかな」
アヴリルスタッフ「・・・・・(しっかり汚れを落として!)」
◆いざ、染める
今回は、藍の乾燥葉から抽出した染液を使います。
去年、カズコさんたちが収穫して乾燥させた藍の葉です。
綿の糸には乾燥葉から抽出した藍の染液が合っています。綿の繊維に対して、乾燥葉の藍液の粒子がちょうど良いんです。
用意していただいた染液の樽は2種類。数日前に仕込んだ樽と前日に仕込んだ樽。
薄めの藍色と濃いめの藍色の糸が欲しかったので、ふたつの樽を使い分けて染めることにしました。
最初の一投では淡い草木の色に染まります。青というよりも、エメラルドのような清々しい緑。
浸ける、絞る、干すを繰り返して、藍が空気に触れるたび、色の深さが増していきます。
数日前に仕込んだ樽からは、渋さのある黄味の強い藍色が出てきました。
前日に仕込んだ樽の方は、なんというか、エネルギッシュで若々しさのある濃い藍の色を出してくれました。
「藍は生きてるから、どんな藍で染めるかで、色の出方が全然違うんよ。おもしろいけど、難しいんやわ。」
◆やっと染めあがる
「この藍の色が欲しい。」
この色、が出るまで染作業を繰り返して、最後は井戸水で叩くように洗えばやっと完了です。草の香りのする藍の糸が染め上りました。
浸ける、絞る、干す、動作自体は繰り返しですが、何百回も繰り返すと手と足に力は残っていません。
浸け回しをしている間は、藍の染みわたりを感じるような静かさ。
干したり洗ったりする時は、藍の色を飛び出させるような激しさ。
このバランスも藍の色を引き出す大切な動きです。
「1円玉が沈まないくらい、静かに染めあげる。干す、洗うは大胆に空気に触れさせるのがコツやね。藍が空気に触れて、色が出てくるんよ。ほら、生きてるやろ!」
◆ すべて手作り、そして自然から。
灰汁練で使った灰汁は、カズコさんの工房のお手製のものです。
かまどを使うと灰が出ます。その灰と井戸水を使って、灰汁を作ります。井戸水にゆっくりと灰の成分が浸透していって、糸の汚れを落としてくれる、魔法のお水が完成します。
「灰汁じゃなくても重曹で代用できるんやけど、昔は台所で染めてたからね。体に影響のあるものは使わないようにしてきてん。」
「井戸水もそう。糸の発色に影響するから、塩素の多い水道水は使わへん。」
◆育てる
カズコさんの工房の藍染は、まず藍の葉を育てることから始まります。3月に種を撒いて、5月になると植え替えをするのですが、この植え替え作業がひと苦労だそう。
草を引いたり、虫から守ったり、庭でこしらえた肥料をあげたりして、藍の葉を育てていきます。
収穫したら、来年まで大切に保存するため乾燥です。乾燥させた藍の葉やさらに発酵させた藍の葉で、また違った藍を染めることができます。
「いい藍じゃないと、いい色が出ない。だから藍を育てるんや。」
7月になると藍が十分育って、収穫の時期になります。その後1ヶ月くらいの間だけ、藍の生葉で染めることができます。
8月頃、今度は藍の生葉染めをみなさんにお届けしたいと思っています。
おまけ
「帰ったら灰汁抜きしてからな、売るまで箪笥にしもといてな。箪笥の中でも藍が育ってくれるから!」
カズコさん、ノリさん、ありがとうございました。
紹介した商品
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カード綿 藍染
¥3000/100g
ご好評につき完売しました。